禁酒法時代のバージニア州フランクリン郡が舞台のバイオレンス映画です。禁酒法時代っていったいどんな時代?飲酒は悪として、お酒の製造や売買が法律で禁止されるのですが、結果は密造酒やヤミ酒場が横行したのは容易に想像できます。
原題はLOWLESSで、無法を意味します。密造ビジネスはすぐさま裏社会を中心に利権の温床となり、一攫千金を企む者と摘発する取締当局がダマし合いに明け暮れる暗い時代でした。
しかし、映画的には格好の舞台で、この映画は主役級の俳優が何人も顔をそろえそれぞれ個性の際立つ映画となっています。今から約100年前のアメリカンノスタルジーを場面場面に感じながら、壮絶なバイオレンスを楽しんで下さい。
目次
欲望のバージニア静か過ぎて怖いヒーロー
主役は、独自の密造酒ルートを持つボンデュラント3兄弟、その中で次男のフォレスト(トム・ハーディ)がビジネスを仕切っています。常に荒ぶる長男のハワード(ジェイソン・クラーク)を押さえつつ、勝手な行動で跳ね上がる三男のジャック(シャイア・ラブーフ)を戒めつつビジネスを広げていくのですが、うかつにもジャックの撒いた種についに足を引っ張られてしまいます。
見どころは、フォレストの存在感。寡黙さゆえに一層存在感を増し、映画全体の恐怖感を強調してくれます。しかし、彼が一旦切れた時の凄さは、さすがトム・ハーディで不死身の「マッドマックス 怒りのデスロード」以上の怒りを堪能できます。
欲望の吹き溜まりにミント色の清涼剤
映画の全編を通じ、不毛の時代を象徴して男臭さのセピア色が色調だが、突如、爽やかなミント色が“さし色”のように現れます。それが、兄弟の経営する酒場に現れるマギー(ジェシカ・チャステイン)の服装。場末の酒場にそぐわないミント色の服は、浮き上がって当然なのですが、見る者にはハッとする清涼感があります。そして、それが「ゼロ・ダーク・サーティ」のクールなジェシカ・チャステインなのです。
片や、チャラけた三男ジャックが思いを寄せるバーサ(ミア・ワシコウスカ)にプレゼントし、着替えた明るいレモンイエローのワンピースも、血なまぐさい映像が続く中で、ホッとする瞬間です。
最後まで期待通りの銃撃戦
さて、ストーリーに戻ると、結局ジャックのしでかしたヘマが原因でボンデュラント兄弟は密造現場を当局に奇襲されることになるのですが、前段に書いたように、LOWLESSたる理由は、取り締る側も平気で賄賂要求をし、従わない場合は、容赦なく制裁を加えるひどいヤツらなのです。
取締チームを指揮するのは悪徳取締官レイクス(ガイ・ピアース)。しかしまあ、憎まれ役の役作りは、そこまでやるかというぐらいにジクジクといやらしく仕上げていますのでお楽しみに!
期待通り、壮絶な殺し合いに突入することになりますが、この場合、ボンデュラント兄弟が「善」で彼らを摘発する取締当局が「悪」のように聞こえますが、よくよく考えれば「悪」対「悪」なのですね。