更新日2015/10/11 この記事は約 13 分で読めます。

戦争とは「最終的外交手段」である!アニメから「戦争」を考える

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9月19日参議院本会議において、いわゆる「安全保障関連法案」が可決され、9月30日公布されました。
この法案をめぐり、賛否両論が飛び交い世論は大きく割れました。

マスコミでは「60年安保闘争」以来といわれる大規模な法案反対のデモに関して連日報道し、国会前に押し寄せる群衆の映像が度々流されました。
この法律については賛成派からも不十分な点があると指摘されているように、今後さらなる改正の動きや議論の可能性がありますが、ただひとつ確実にいえることは今回の件で「戦争」という問題に関して各自が考えるきっかけになったのではないか、といえます。

先日「問題作や話題作!注目の作品が多数の2015年夏アニメを振り返る」において、3本ご紹介させていいただきましたが、この世の中の動きと連動するかのごとく夏アニメでは現実を考える問題作が多かったように思います。

今回は「戦争」というキーワードをもとに、今の動きを考えるヒントになると思う作品を3本(+補足1本)ご紹介したいと思います。

「空気」と「戦争」について触れるにあたり…「ガッチャマンクラウズインサイト」

前述の「夏アニメを振り返る」のなかで、最後にご紹介した「ガッチャマンクラウズインサイト」についてこの項の導入のために補足させて頂きたいと思います。

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先日最終回を迎えた同作ですが、最後までぶれずに「空気」という問題をクローズアップさせていました。

自ら考えることを放棄しその場の「空気」に流されるままに動いていく日本社会。特にSNSを中心としたネット社会にいては特に顕著になりがちです。
地球を訪れた宇宙人ゲルサドラが良かれと思って唱えた「みんな一つになろう」という運動は、結局のところかつての悪名高きナチスや文化大革命期の中国、ポルポト政権下のカンボジアに匹敵するような、「排他的同一性思考社会」の誕生へとつながってしまいます。

主人公はその流れをとめるべく自らを犠牲にして「自分の頭で考え行動する」ことを訴えます。
最悪の危機は脱するものの、実際には「空気」にどっぷり浸かり「感情」で行動する、という社会はまだ存在し続けている、といった感じでした。

かなり意欲的な作品だったと私は思いますが、この「空気」という意味からみると、これまで公開された作品のなかにも注目に値するものがいくつかありますので、ご紹介していきたいと思います。

その後の「世界情勢」を見事に予言?「機動警察パトレイバー2 the Movie」

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「パトレイバー」の世界観

「レイバー」と呼ばれる多足歩行型産業機械が開発、普及した世界。
その広範囲な使用拡大とともに、レイバーを用いた犯罪も急増。警視庁はこれに対応するためにレイバー隊を創設し、その対処にあたった、というコンセプトのもとに展開される物語が「パトレイバー」です。

「うる星やつら2ビューティフルドリーマー」「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」などで世界的にも有名な押井守氏が監督し、今作はその劇場版の2作目にあたります。

1999年、東南アジア某国のPROに派遣された陸自のレイバー隊は、現地武装勢力の攻撃を受け壊滅してしまいます。
それから3年後の2002年、横浜ベイブリッジが国籍不明の航空機によりミサイル攻撃を受け大破。
空自戦闘機の関与が取りだたされ、警察と自衛隊が対立。
3年前のPROで唯一生き残ったレイバー隊隊長柘植行人(CV:根津甚八)とその組織が事件の首謀者と目されますが、足取りはなかなかつかめず。
そして情報混乱と不安が交錯するなか、府中の空自防空指揮所に対し行われたハッキングにより、戦闘機のスクランブルと味方同士での空中戦の危機が発生。
この事件をうけ、政府は警察力のみでの事態収拾は困難と判断し、首都圏への自衛隊治安出動を決断します。
しかし、その動きをあざ笑うかのようにテロ事件はエスカレートしていきます。
柘植の行方を追い、主人公達の属する「警視庁特車2課」そして、警察、自衛隊を巻き込んだ一大騒乱が首都・東京で繰り広げられます。

「現実」と「虚構(フィクション)」の間で…

注目すべき点は、この作品が公開されたのが1993年8月ということです。

物語中では警察と自衛隊の対立のなか、事件の拡大を恐れた政府は自衛隊に治安出動を命じます。その中で、新宿駅前に墜落した組織の飛行船からガスがふきだし、警戒に当たっていた自衛隊員が「毒ガス」が散布されたと判断して大混乱に陥るシーンがあります。

作品公開から2年後の1995年、「地下鉄サリン事件」をはじめとする「オウム真理教事件」が発生します。事件後に明らかにされた情報によると、教団側からの飛行船、ヘリコプターなどによる化学兵器を含めた攻撃を想定して、自衛隊内部で「出動オペレーション」が策定されていた、とするものがあります(「極秘捜査」麻生幾著、文藝春秋社より)。

さらに、ベイブリッジ攻撃。組織によりジャックされた米軍機による攻撃だったのですが、作品公開から8年後の2001年9月11日、ハイジャックされた航空機によるニューヨーク世界貿易センタービル攻撃、いわゆる「同時多発テロ事件」が発生します。

この事件のあと、米国世論は首謀者であるテロリスト組織根絶を求める方向へ一気に流れ、その結果、今まだ世界中で続いている「対テロ戦争」に至ることとなります。

公開後に起きる事件をまるで予言していたかのような内容に衝撃を受けるととともに、作品世界においてベイブリッジ事件後相次ぐ事件に対して、対処する側も世論も「何かしなければいけない」という「空気」に支配されていき、柘植ら組織の狙いどおりとなる、というのがこの作品を観るうえでのポイントだと思います。

「正義の戦争」と「不正義の平和」

冒頭のPROのシーンで、武装勢力の攻撃に対し、柘植は本部(恐らく派遣自衛隊の指揮本部)に交戦許可を訴えますが、本部の回答は「交戦は許可できない。全力で回避せよ」

十分な火力がありながら、自分達の命を守ることも許されない。法律上は最低限の武器使用は許されていますが、当時の日本の世論は自衛隊派遣自体が「軍国主義」という風潮もあったので、交戦による責任問題を回避したい官僚的な上官によるものだと見受けられます。

柘植が事件を起こしたのは「平和ボケした日本に対する警鐘」となっています。作品公開当時の日本(場合によっては今もそうですが)の「戦争」に対する意識は、この物語のキーパーソンとなる自衛隊調査部の荒川茂樹(CV:竹中直人)の語りが表しています。

「戦争への恐怖に基づくなりふりかまわぬ平和。正統な対価をよその国の戦争で支払いそのことから目をそらし続ける不正義の平和」

「その成果だけはしっかりと受け取っていながら、モニターの向こうに戦争を押し込め、ここが戦線の単なる後方であることを忘れる。いや、忘れたふりをし続ける」

最後に柘植は逮捕され、これだけの事件を起こしながら自決しなかった理由を問われ、この街がどうなるのか、もう少し見てみたいと思った、と語りました。

これは「正義の戦争」「不正義の平和」が実は表裏一体であり、それぞれがどう判断しどのように結論を出していくのか見極めてみたい、というメッセージに受け止められます。「空気」に流されることの悲喜劇をこの作品は描いているように思います。

現在、この作品はBlu-ray/DVDで販売されているほか、バンダイチャンネルなどの配信(有料)が行われています。

バンダイチャンネル:http://www.b-ch.com/ttl/index.php?ttl_c=1414

1980年代の東京、実は「最終戦争後」の宇宙船の中だった!? 「メガゾーン23」

メガゾーン23の物語

何の疑いもなく過ごしている平凡な日常、謳歌している平和な世界が、実は作られたものだったとしたら…。

SFモノとしては比較的王道の部類に入るこのテーマを扱ったのが、この「メガゾーン23」です。
1985年にOVAとして製作され全3部作からなりますが、今回ご紹介するのはその第1作目。

1980年代・東京。

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空前の経済的繁栄と平和の下「一番いい時代」と呼ばれるときを謳歌する人々。
主人公である矢作省吾(CV:久保田雅人)もその一人で、好きなバイクで街を駆け巡り、友人とバカをしたり、恋愛したりと「素晴らしき日常」を謳歌していました。

しかし、友人である中川(CV:山寺宏一)が社から持ち出てきた試作大型バイクに触れた時から、彼とその仲間達の運命は大きく変動していきます。
そのバイクは極秘開発された2足歩行型ロボットに変形可能な新型軍用バイク「ガーランド」で、このことから中川は射殺され、省吾は軍から追われることになります。

「ガーランド」計画の責任者でもあるB.D少佐(CV:塩沢兼人)の追跡は執拗を極め、アイドル歌手・時祭イブ(CV:宮里久美)の番組に出演してガーランドを公開しようとした省吾の意図も情報操作と実力行使で阻止されてしまいます。

その後、ガーランドを追う軍部隊との対決の過程で、省吾は自分達が住んでいる世界が実は巨大宇宙船の中にあり、「バハムート」という巨大コンピューターにより管理されてきたことを知ることになります。

人類は最終戦争の果てに地球を脱出し、巨大宇宙船で第2の生息可能な惑星を目指していること、人々はバハムートにより「20世紀の幻影」を見せられ「虚構の平和」の中生かされてきており、実際は同じ宇宙船の勢力「デザルグ」との間で戦争が行われているということ、そして夢中になっている時祭イブも、バハムートがつくりだした「バーチャルアイドル」だった、ということに省吾はショックを受け、どうしたらいいのか判らなくなります。

一方、デザルグの脅威が身近に迫っているのにもかかわらず政争にあけくれる政府及び軍上層部に対し不信感を募らせる青年将校達は、B.Dを擁してついにクーデターを実行します。
実権を握ったB.Dはテレビを通して「国防への協力」を訴えかけ、街は一気に戦時色ムードに染まっていきます。バハムートの管理システムを奪取した軍により、イブも戦意高揚の道具にされていきます。

戦争への不安が募るなかで、ガーランドの秘密保持のためにさらに友人を殺された省吾は、全ての原因がバハムートにあると思い込み、中枢へ特攻をかけますが…。

若者の希望と挫折、戦争への恐怖が描かれていくSF作品です。

「ノリ」で突っ走る「バブル期」を再現

さて、「空気」についてですが、作中「志願兵の募集」に対して登場人物の一人が志願し、テレビのインタビューにこう答えます。

「特別国家公務員なんて肩書きカッコいいし、制服にM-16なんてビシバシに決まるしさ、でも本当はお国の為であります、なんちゃって、ハハハハ」

当時「バブル景気」が最高潮にあり、軽いノリの若者が多かったという背景もあります。

作品全体として「戦争」「軍」というものに対しかなり批判的に描かれていますが、この作品が公開された当時は米ソ冷戦の最中であり、日米同盟の深化(「日本列島不沈空母発言」など)や防衛費の増額などに対して、社会的には不安や危機感が広がっていたこともありました。

ただただとにかく「平和」が一番で、そのためにある種「感情的」になり「ノリ」で突っ走る傾向が主人公の省吾を含めて、この作品の登場人物に見られますが、現実社会においての人々の思考形態をみると、公開当時はもちろん現在でも(内容や方向性は異なることもありますが)そう変わっていないことは皮肉ともいえるのではないでしょうか。

現在1作目と2作目がバンダイチャンネルなどで有料配信されており、11月には全3部作のBlu-ray/DVDボックスが発売されます。

「バブル」という意味では30年前の当時と多少似ている社会状況、比べながら観てみるのもいいのではないでしょうか。

公式サイト:http://megazone23.tokyo/index.html
バンダイチャンネル:http://www.b-ch.com/ttl/index.php?ttl_c=4029

戦争とは「最終的外交手段」である 「機動戦士ガンダム SEED/ SEED DESTINY」

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「宇宙世紀」とは異なる「ガンダムワールド」

あの「アムロ」や「シャア」が登場し地球連邦とジオン公国が戦うものとは異なる世界観で描かれた一連のシリーズで、
「ガンダム」を含めた「モビルスーツ」が登場しますが、作品的なつながりはありません。

しかし、この作品は「戦争」に関する描き方において注目すべきところがあります。それは戦争を「最終的外交手段」と表現したことです。

コズミック・イラと呼ばれる統一歴が始まり70年、遺伝子操作を施された人類勢力「コーディネーター」と従来からの人類「ナチュラル」の間で軋轢が高まっていました。
対立は経済的問題を中心に激化していき、両者は問題解決のための「最終的外交手段」を決断します。

地球側によるコーディネーター勢力の国家「プラント」への核攻撃、コーディネーター側の軍事組織「ザフト」による反攻・地球への逆侵攻など、戦争が一気に拡大していきます。

当初物量で優る地球側の勝利が確信されていましたが、ザフト側は新兵器「モビルスーツ」を大量投入して地球側を圧倒。地球上の多くの土地がザフト占領下に置かれました。
対する地球側も急ぎモビルスーツ開発を行い、「ガンダムシリーズ」と呼ばれる5体の機体を完成させましたが、開発拠点の資源衛星へリオポリスは直後ザフト側の急襲を受け、4体を奪取されてしまいます。
主人公キラ・ヤマト(CV:保志総一朗)は残された機体「ストライク・ガンダム」に搭乗し、自らはコーディネーターでありながら、ナチュラルである地球側と協力して戦場から脱出するために宇宙を駆けることになります。

第1作「SEED」では、キラが幼なじみらがいるザフト側と戦わなければならない苦悩を描くとともに、地球・ザフト双方の上層部における権力闘争、戦争遂行への異常な執念も合わせて描かれています。
その続編「SEED DESTINY」では、先の地球・プラント間の戦争から一年後、一見平和になったかのように見える社会に渦巻く陰謀。平和主義者だと世間が認識していたプラント側指導者によって巧妙に誘導されていく「新たな戦争」。今作主人公シン・アスカ(CV:鈴村健一)と前作主人公キラのそれぞれの「正義」をめぐる対決が描かれていきます。

「最終的外交手段」としての「戦争」

プロイセン(現在のドイツ)の将軍であったカール・フォン・クラウゼビッツはその著作「戦争論」において、「戦争」が政治目的の延長線上の存在であることを示しました。この作品において、戦争が憎しみの果てに起こる、という表現ではなく「最終的外交手段」という表現をとったことは特筆に値すると思います。

一般的な認識としても、この国では「政治」と「軍事」を分離して考える傾向があるのでのはないでしょうか。

今シリーズでは為政者は「軍」を政治目的のために利用していきます。

特に、第2作ではプラント側指導者が世論誘導術に長けていることから、「全ての諸悪の根源は軍産複合体である」との認識をあらゆるネットワークを通じて敵・味方問わず周知させていき、ついには現実社会でいうところの「有志連合軍」を結成してしまいます。
世界の「空気」は完全にプラント側に傾いていくなか、自らの政治目標でもある、好戦的人間を遺伝子選別で排除していく最終計画「ディステニープラン」の実行寸前までいってしまいます。

最終的に「ラスボス」扱いされる「軍産複合体」ですが、キーパーソンとしてそのトップが両作に登場します。
第1作ではザフト拠点に対する核使用を躊躇する地球側高官らに対し、「核は持ってて楽しいおもちゃじゃないんだ、使わなければ意味がない」と言い放ち、主戦論を展開します。
そうしなければ自分達の産業が発展していかない、という「政治的目的」があるからでしょう。
実際の世界においても、(特にアメリカなどで)戦争が起きるたびに「軍産複合体」の関与が取りだたされます。これについて正面から描いたのはもしかするとこの作品が初めてなのではないでしょうか。

このように意外にリアルな戦争の面を描いているこのシリーズですが、特に第2作においては、最終的な決着については「戦うことの矛盾」についても描いています。
「世界の恒久平和」を目指すプラント側指導者は、その方針に従わない勢力(軍産複合体側・中立国含め)を「テロリスト」と呼び、「大量破壊兵器」で恫喝します。それに反抗するキラをはじめとする勢力は「大量破壊兵器の排除」「生命の尊厳遵守」を掲げザフトと戦います。
「戦うことを止めるために戦う」という矛盾した行動について、ファンからも様々な意見が寄せられているようですが、恐らく結論が出ることは絶対出ないでしょう。

このシリーズもバンダイチャンネルなどで有料配信されていますが、双方あわせて100話分になりますので、観るとしたらかなりの力量がいるかもしれません。総集編であるスペシャルエディションもあるようなので、手っ取り早く済ませたい方はそちらもおすすめです。

ガンダムSEED公式サイト:http://www.gundam-seed.net/top/index.html
ガンダムSEED DISTENY公式サイト:http://www.gundam-seed-d.net/
バンダイチャンネル(SEED):http://www.b-ch.com/ttl/index.php?ttl_c=3178
バンダイチャンネル(SEED DISTENY):http://www.b-ch.com/ttl/index.php?ttl_c=

いかがでしたでしょうか。
かなり長いご紹介になりましたが、他にも戦争を扱ったアニメはいくつかあり、時節柄からもこれを機会にいろいろと考えてみるのは有意義なことではないでしょうか。

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