「砂上の法廷」一切の真実がもろくもこわれていく法廷映画
砂上と言えば思い出す言葉は「砂上の楼閣」。どんなに精巧に作り上げた城郭も、砂の上ではもろく壊れてしまう様を言います。この映画が好きなのは私の好きな法廷モノということと、さらに興味を持ったのがその“真実の壊れ方”でした。
主人公は弁護士ラムゼイ(キアヌ・リーヴス)です。キアヌ・リーヴスと言えば『マトリックスシリーズ』ですよね。でも、あまりマトリックスの彼と結び付けず、新境地に臨む彼を受け入れた方がいいでしょう。
- 製作:2016年
- 日本公開:2016年3月25日
- 上映時間:94分
- ジャンル:ドラマ/スリラー
- 映倫区分:PG12
- 公式サイト:http://gaga.ne.jp/sajou/
目次
容疑は息子の父親殺し
容疑は、溺愛されていた息子マイク(ガブリエル・バッソ)の父親ラシター・ブーン(ジェームス・ベルーシ)殺しです。父親は見るからに好色で欲まみれのごう慢オヤジです。それに比べ息子は、マジメそうな法律家志望の学生です。父親はまた母親ロレッタ(レニー・ゼルヴィガー)にも日常的に暴力をふるっていたらしく、最初から「殺したくもなるよな!」と思わせてくれます。
ちなみに、母親役レニー・ゼルヴィガーは、あの『ブリジット・ジョーンズの日記』なんですよ。その彼女が映画の中ではキーパースンで、暴力的好色夫とはいえ、息子が夫を殺した裁判となると正常ではおられず顧問弁護士のラムゼイにすべてを任せます。
圧倒的に不利な状況
そんな背景で始まった裁判ですが、法廷での駆け引きは法廷モノに期待する知的好奇心を十分に満足させてくれます。マイクを弁護するラムゼイと助手のジャネル(ググ・ルバサ・ロー)が知恵を絞りますが、どう考えても不利な状況は否めません。
検察側は証人として、父親のチャーターする専用機の乗務員、専任の運転手、事件当日の婦人警官と次々に証言台に立たせ、マイクの有罪を固めて行きます。しかし、ロレッタが日常的に暴力を振るわれたり、虐げられていたという証言もあり、動機的にはロレッタも十分ありえることもわかってきます。
The Whole Truth(原題)=一切の真実
ラムゼイは証言者の矛盾を助手と一緒に覆していくのですが、この映画の宣伝文句には「ウソまみれの法廷」とあります。検察側の証人発言も怪しいのだが、そもそもマイクやロレッタの発言ももしかして嘘だったら・・・。
原題はThe Whole Truth。裁判の冒頭「真実だけ述べる事を誓いますか?」と聞かれ、神に誓って“Yes”と宣誓する時のあの「一切の真実」です。さあ、どこまでが嘘でどこが「一切の真実」か、「真実のもろさ」という砂上に立って進む裁判をじっくり堪能できる映画です。