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スーパーの精肉売場に異変?
先日、いつも買い出しに行っている近所のスーパーでちょっとした「異変」が起きていることに気付きました。
それは、精肉売場に置かれた各肉の場所がいつの間にか変わっていたのです。
これまでは、入って手前に「挽肉」がありました。
その隣が「輸入豚肉」でそこから奥に向かい「国産豚肉」「輸入牛肉」「和牛」「輸入鶏肉」「国産鶏肉」と並んでいました。
それが、「挽肉」のポジションは変わらなかったもの、その隣にあったのは「和牛」だったのです。
そこから「輸入牛肉」「国産豚肉」「輸入豚肉」ときて、一番奥に「鶏肉」コーナーが広がっていたのでした。
たぶん価格とか、売れ行きに応じて店側が考えた末に売場の変更に踏み切ったのでしょう。
確かに、「肉」の価格がかなり変動していることは感じていましたし、各肉の売れ残り具合も以前と種類が違ってきているように思えました。
もともとの味の好みもありましたが、夕食などでメインに利用する肉はだいたい「豚肉」でした。
それが今年に入り、これまで買っていたタイプのものでも、100グラムにつき30円から40円以上値上がりしてしまうような始末。
泣く泣く「豚」食をあきらめ、鶏に切り替えたことが何回あったことか……。
しかし、この状況、いったい何が起きているのでしょうか。
穀物類は大豊作で安値、それなのに何故……
穀物の国際価格が9月以降大きく下落しています。
大豆、小麦、トウモロコシといった穀物は、食品に利用する以外に、牛・豚を育てるうえでの飼料として使われる割合が大きくなっています。
その穀物の大生産地である米国では、今年は大豊作となっているということで、それに伴い取引価格も大きく値を下げています。
その結果として、牛・豚のエサ代も安くなり、飼育コストが下がり、それがひいては肉の価格にも反映されるのではないか。
素人考えですが、そう思ってしまうのは私だけではないはずです。
しかし、実態はそうならなかったのでした。
穀物と同様にる米国は食肉も大産地です。
その米国では、牛・豚の飼育頭数が減少しているというのです。
数が少ないので品薄で値段がつり上がっている……。
そもそもの原因は、一昨年北米を襲った大干ばつでした。
大豊作となった今年と違い、当時は50年ぶりといわれる大干ばつに見舞われた米国では穀物価格が上昇。
そのためエサ代上昇を危惧した米国の畜産農家はこぞってと畜数(食肉にする数)を増やしたのです。
当時の状況を日本経済新聞電子版が次のように伝えています。
「シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場する豚肉先物(期近)は7月の高値から約3割下落した」
「飼料高に堪えかねた業者が手持ちの豚の出荷を急いだためといい、約1年半ぶりの安値まで水準を切り下げた」
ここでは豚が話題になっていますが、牛も同じだったようです。
さらに翌年、豚流行性下痢(PED)が大流行し、豚肉はさらに品薄の方向へ進みます。
そして、今年数が少なくなっているうえに、一頭にかける肥育期間がこれまでより(数週間から4ヶ月ほど)長くなっていることから利用するエサ代も豊作効果を打ち消し例年と変わらない状況になっています。
とにかく一頭あたりからとれる肉の量を増やしたいという思惑からなのか、長く育てる傾向にあるそうです。
日本国内に不安要因も
昨年の猛暑により、日本国内で豚の種付が不調。
そして、今年春以降、日本国内でも豚流行性下痢(PED)が流行したことにより、日本国内での豚肉の品薄状態が広がりました。
これを見越して海外からの輸入を増やした業者もあり、一時的に在庫過剰状態から多少の価格の下げもありました。
しかし、PEDの影響がまだ続いていることから出荷数の減少は避けられず、価格の安定化にはつながらないとの観測もあります。
米国の穀物大豊作を受け、日本国内で販売される飼料の価格も引き下げられました。
ただ、このプラス要因も相殺される不安要因がいくつかあります。
まず一つあげられるのは、和牛などにおいて、生産農家が高齢化などの理由で減少していることです。
それと、2010年以降に流行した口蹄疫の影響がまだ残っていて、飼育頭数がまだ回復していないこともあげられます。
これらの国内農家からの供給が少ないため品薄状態は改善されず、輸入も円安が支障となり価格下落にはつながらない状態です。
いつになったら価格は安定するのか?
9月末の段階において、牛・豚肉の関税交渉を含めた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は、年内妥結が不透明な状態に陥っています。
これらが妥結して、米国産牛・豚肉に対する関税が下げられれば(国内農家へ大きなダメージを与える可能性もありますが)、価格低下につながる可能性もあります。
しかし、現状では両国とも主張がかみあわず、他の国との交渉日程にも影響が出る懸念すら出ています。
そしてさらに懸念する材料も明らかになってきています。
それは経済成長著しい「中国」の存在です。
これまで「牛丼」用として安価に取引されていた米国産牛肉については、中国で人気の高まっている「火鍋」にも向いているといわれています。
経済発展により食肉消費量が増加し、その需要を賄うために、日本よりも高い価格で取引されていることもあるということです。
この中国の存在が、安く牛肉を確保しようとする日本に障害となっています。
とりあえず問題解決のために、減少した飼育頭数の回復を日米両国で待たねばなりませんが、早くとも2016年以降になることは確実。
これからどうなるか、いつになったら価格は安定するのか、正直なところわからないのが現状です。
残念ながら気長に待たねばならないかもしれません。