映画「追憶の森」こんなことになるならもっと優しくしておけば良かった・・・

自殺の経験はありませんが(笑)、自殺志願者が自殺する場所を選ぶ心境はわからないでもありません。最愛の妻を亡くして失望のどん底にある主人公アーサー・(マシュー・マコノヒー)が自殺場所を見つけるためにインターネット検索をし、日本の樹海を選んだところからこの映画は始まります。

場所は青木ヶ原樹海。(実際に ”the perfect place to die” で検索すると最初にヒットするのがここです。)空から見せてくれる樹海は、原題通り”THE SEA OF TREES. “で、樹々が風に吹かれて波打つさまは海そのものです。ところが一歩その中に立ち入ると光は遮られ、暗く湿った空気に息が詰まります。樹海の奥深く入り込み、朽ちた丸太に腰をかけなんのためらいもなくポケットの錠剤を取り出すアーサーですが、その時、視線の先に捉えたのは傷を負いボロボロになって彷徨う一人の男でした。

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  • 製作:2015年
  • 日本公開:2016年4月29日
  • 上映時間:111分
  • ジャンル:サスペンス
  • 映倫区分:G
  • 公式サイト:http://tsuiokunomori.jp/
目次

すれ違う夫婦の愛情が戻る時

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場面は一転、なにやらギスギスした夫婦の会話に変わります。男はさきほどのアーサー、そして妻はジョーン(ナオミ・ワッツ)です。特に妻ジョーンのイライラ感はひどく、ワインをあおるように飲みながら、友達の前でも夫をけなす様子が続きます。ケンカ自体はそれほど深刻さはないようにも見えますが、ただ長年の鬱積したすれ違いを強く感じます。

そんなある日、ジョーンはふとした拍子に鼻血が出たのが気になり病院を訪れますが、念のため受けたCTスキャンで思わぬ結果を突きつけられます。脳に腫瘍があることを知らされ、死も覚悟の難しい手術を受けることになるのですが、これが皮肉にもお互いを思いやるきっかけとなり愛情を取り戻すことになるのです。

樹海で出会う運命の男タクミ

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結局、手術は失敗に終わり最愛の妻を亡くした痛手を背負いきれず自殺の意志を固めた・・・と勝手にストーリーを作ってしまいそうになりましたが全然違いました。自殺という、アーサーの重い選択を裏付ける別の理由がその後のストーリーで教えてくれます。

さて、樹海の中で出会った男タクミ・ナカムラ(渡辺 謙)はアーサーに助けを求めます。自殺しようと数日彷徨っていたが死に切れず、突然目の前に現れたアーサーに助けを求めるのです。自殺志願者が同じ自殺志願者に助けを求めるというある種滑稽な設定なのですが、この設定は後ほど謎解きされます。

アーサーの知らないジョーンのこと

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助けを求めるタクミに対して、アーサーは自殺用の錠剤を飲むために持っていた唯一の水を与えます。そして、自分がここまで歩いてきた道を辿ってタクミを樹海から出してあげようとしますが、結局2人ともさらに深い樹海の中を彷徨うだけでした。

死期を感じながら、2人はお互いの事情を語り合います。アーサーは亡くした妻ジョーンと手術前に交わした約束のこと、そして手術後に起こったことを話します。タクミも自分の生い立ちを語りますが、この時のタクミの言葉が、生前ジョーンがアーサーに質問したのに答えられなかったことだと後になって気づきます。

果たしてタクミは何者か、ジョーンとの関係は?この映画最大のテーマです。外国人から見た日本人の死生観の表現とも取れます。しかし、ナオミ・ワッツ演じる悲劇のジョーンの方に傾倒していた筆者は、日常ではほとんど感じることのない夫婦愛を究極の状況設定で教えてくれたと思い込んでいます。
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