非常に難しい映画です。映画は娯楽なんだから、さっと見てまた新しい映画を楽しめばいいようなものですが、この映画を1回見ると“騙されたまま”でいるのが悔しくて、もう一度見てこの映画に仕込まれた精巧な因果を解き明かしたくなる傑作映画です。
東西冷戦下のイギリスで、秘密諜報部(通称サーカス)に二重スパイ(もぐら)が存在しているという疑いが長年ありました。得た情報は東側のソ連情報部に筒抜けになっているというから、その解決はイギリス政府としては捨て置けない政治的ミッションだったのです。そのミッションを受けたのが、一旦サーカスを辞めていた元諜報員のジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)で、彼がこの映画の主人公です。
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- 製作:2011年
- 日本公開:2012年4月21日
- 上映時間:128分
- ジャンル:サスペンス
- 映倫区分: R-15
- 公式サイト:http://uragiri.gaga.ne.jp/
サーカス幹部に“もぐら”疑惑
この“もぐら”の存在は、以前から度重なる作戦の失敗や情報漏えいから、サーカスの長官だった「コントロール」(ジョン・ハート)も気付いていて、もぐらの情報元に接触するため配下のジム・プリドー(マーク・ストロング)をハンガリーに送り込んでいますが、これも情報漏えいが原因で失敗に終わっています。
コントロールはその責任を取って失墜します。もぐら探しの依頼を受けたスマイリーは、コントロールがもぐらを4人に絞っていたことを知ります。この辺りから登場人物が一気に増えて、ちょっと混乱します。
コントロールは4人の幹部に暗号を付けていて、ティンカー(鋳掛け屋)、テイラー(仕立屋)、ソルジャー(兵隊)、プアマン(貧乏人)と呼んでいました。そして、スマイリーは自分にもベガマン(乞食)という暗号を付けられていたことも知ります。ちなみに原作の「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」はここからきています。
「ウィッチクラフト作戦」を仕掛けたのは誰?
スマイリーは、海外から有力情報を流してきた部員のリッキー・ター(トム・ハーディ)、その上司ピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)らと真相に迫ろうとしますが、一方で現在の長官アレリンによって駐英ソ連大使館員ポリヤコフに偽情報を渡すという「ウィッチクラフト作戦」が進められています。
スマイリーらの調べで次第にわかってくるのが、この作戦はサーカス側から仕掛けたようになっているが、実はポリヤコフのバックにいるソ連情報部の黒幕カーラが“もぐら”を使って仕掛けていたということです。
1回目は騙されてあげよう!
二重スパイと簡単に言うが、その実は単に身を潜めて聞こえてくる情報のみを横流ししているわけではなく、本国の指示にしたがって仕掛けをするからこそ、隠れている情報を顕在化することができるということがわかります。
冒頭に書いた非常に難しい映画というのは、この辺のからくりです。映画は、普通は見ている観客が理解しやすいように、ところどころに背景や人物表現を丁寧に挟みながらストーリーを進めますが、極端に言うとそういった“注釈的な説明”はあまりありません。あっても、ふとした映像だけであったり非常に示唆的なのです。
しかし、あきらめるにはもったいない映画なのです。映像、音楽、名優の表情や演技、どれをとっても秀逸でじっくり見る価値のある映画です。一回目はまんまと騙されてあげましょう、そして2度目3度目は、必ず堪能できること間違いありません。
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