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2015年夏アニメは問題作が目白押しだった!?
10月のテレビ番組改編期を前に、もうまもなく夏アニメがすべて終了します。
今期はいろいろな意味において、かなり「豊作」だったといえます。
特に現実の問題を反映しているかのような内容だったり、かなり独特な世界観を展開していたりと、大人が観ても十分に楽しめるものが多かったように思います。
今回は、まもなく終わる2015年の「夏アニメ」のなかで、「現実の問題」を反映しているのでは?と思われる3作品を振り返り紹介していきたいと思います。
放送は終了しますが、興味ある方はBlu-ray/DVDやネット配信をチェックしてみるとよいかと思います。
「現実」を考えるキーがあるかも…のアニメ3選
ネット上で賛否の激論も、自衛隊が主役
「GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」
8月のある日、東京・銀座に突如「門(ゲート)」が出現。
異世界と現代日本がつながり、「帝国」を名乗る古代ローマ風の軍勢の攻撃が始まります。
繰り広げられる殺戮・略奪に対し自衛隊と警察機動隊が反撃を行い、相手を押し戻します。
この事件の後、日本政府は異世界を日本の一部である特別地域(特地)と解釈し、攻撃に対する補償獲得のために陸上自衛隊の派遣を行います。
ドラゴンや妖精が普通に存在する異世界での自衛隊の戦いとゲートを通じた異文化交流を、オタクな自衛官を主人公に描く「ファンタジー」作品です。
この作品が特にネット上で議論を呼んだのは、「時節的な」こともさることながら、自衛隊の活動やそれに伴う政治工作などを正面から描いたことも大きかったと思います。
ドラゴンに襲われたある村の住民を救うため主人公らが戦いますが、損害がなかった自衛隊部隊に対して、村の全住民の1/4は犠牲になってしまいます。
このことを野党が問題視(自衛隊が難民を盾にして任務を放棄したのでは?)、主人公、そして現地で親交をもった魔法使い、妖精、亜神の3人のヒロインが国会に参考人招致されます。
自衛隊の対応への非難に終始する野党議員に対し、ヒロインの一人が言い放った言葉が大きな反響を呼んでいます。
「(自衛隊が)難民を盾にしていたということはなかった」
「兵士が自分の命を大切にして何が悪い?だいたい彼らが無駄死にしたら、あんたたちみたいに雨露しのげる場所でだべっているだけの存在を誰が護るっていうの?」
「1/4が犠牲になったというけれどそれは違う。彼らは3/4を救ったのよ」
「そんなことも判らないなんて、あんたおバカ?」
ネットではこのヒロインが本当に国会にいたらどれだけよかったか、などのつぶやきも出たりしました。
この作品の原作者は元自衛官で、もともとネット小説サイトに投稿したのがはじまりだったとのこと。
公開後、閲覧者数がどんどん増え、書籍版、コミック版、そして今回のアニメ化に至ったというわけです。
戦闘シーンについても「過剰反撃では?」との意見もありますが、実際に陸自広報や部隊関係者が制作協力しているだけあってかなりリアルに描かれており、その点も一度チェックしてみる価値はあります。
ビジネスの基本ルールから政界再編劇までを描く「青春グラフティー」
クラスルーム☆クライシス
火星がテレフォーミング(地球化、いわゆる惑星の環境を改造して宇宙服なしでも居住できるようにすること)され、各国が都市を建造し生活するようになった未来。
日本の火星都市「第4東京都」の経済特区「霧科市」、そこに本社を構える世界的宇宙企業「霧科コーポレーション」を舞台に若き「高校生サラリーマン」が織りなす「青春グラフティー」…という売り文句になっているこの作品。
「高校生サラリーマン」?
「青春グラフティー」?
と聞くと、かなりライトな感じのものに思われがちですが、意外にも内容はシリアスでビジネスに関する「あるある」もあったりの「異色作」となっています。
「霧科コーポレーション」が経営する高校「霧科科学技術学園」に、主人公らが所属する「先行技術開発部 教育開発室(通称A-TEC)」というものがあり、ここに所属する高校生たちは学校で学びながら、実際に霧科コーポレーションの製品を開発する業務を請け負っている、すわなち学生であり社員であるということから「高校生サラリーマン」というわけです。
「青春グラフティー」というからには、「恋愛」「友情」「団結」とかいった内容が想起されますが、ないわけではないのですが、物語の多くがこれとは対称的な内容の「派閥抗争」「リストラ」「政治献金」「ビジネスルール」などの話題が登場してきています。
例えば、製品開発予算が足りずに追加予算申請を行った主人公のひとりに対し、もう一人の主人公が
「この事業が会社にどれだけのメリットをもたらすのか、何故今必要なのか、効果を示せ」
と突っ返したり、金がないとぼやく面々に
「お金ばかりに頼ってないで知恵を絞れ」
と叱咤したりといった具合に、会社勤め経験者なら思わず唸ってしまうような内容が次から次へと飛び出します。
さらには、リストラで窮地に陥って救いの手を求めた労組がいとも簡単に会社側に寝返ったり、許認可をめぐる官庁・議員・業者の癒着など、一見ブラックな内容も飛び出してきます。
原作はないオリジナルアニメ作品ですが、池井戸潤作品やかってのフジの連ドラを思い出すような、なかなか興味深い作品だと思いますので、チェックおすすめです。
「僕らの国には社会がない」SNS社会への問題提起も
ガッチャマンクラウズインサイト
「ガッチャマン」というと、古いおじさん世代では「科学忍者隊」ですが、この作品は名前こそ「ガッチャマン」ですがそのコンセプトと名前を多少使った「完全な別作品」といえるものです。
あえて旧作と同じ点を探すとすれば、ある敵対対象から人類を護る特殊部隊が「ガッチャマン」ということ位でしょうか。
そのある種「リブート」作品のセカンドシーズンが今作「インサイト」です。
舞台となるのは少し違う歴史を歩んでいる現代日本。
悪徳異星人から人々を秘密裏に護ってきた「ガッチャマン」は公になり、またファーストシーズンで登場した人間の意識を実体化させる能力「クラウズ」が一般に広く普及するようになり、世の中は一見平穏に発展していくように見えました。
「クラウズ」は意識の実体化により、遠く離れた場所での各種作業や重労働などの奉仕活動に役立つ一面をもつ一方、これを犯罪に利用する輩も現れ始めていました。
そんななか、新潟県長岡市に異星人「ゲルサドラ」が不時着。
「彼の来訪した星は平和が訪れる」と言われる友好的異星人で、人間の感情をふきだしの形に実体化する能力をもっていました。
すぐに日本社会に溶け込んだゲルサドラは、「争うことなく一つになろう」という理想を訴えていきますが…。
「僕らの国には社会がない」というコピーはかなり強力です。
「GALAX(ギャラックス)」と呼ばれるSNSが高齢者を除いてほぼ完全に一般化して、これにより社会のあらゆる活動が行われているという世界。
スマホによる市長選挙まで行われています。
その一方で、人々は「考える」ことを無意識のうちに「放棄」していて、知らず知らずのうちに「空気」に流されているという現実。
今現実に社会で起きていることを想起させるような内容は注目するに値します。
この作品はもっと評価されてもいいと思うのですが、内容的に難しいと思う人が多いのでしょうか。
つい先日の放送では、高齢の花火職人である主人公の祖父が、先の戦争を称して
みんなはあの戦争を軍部のせいにしているが、それは違う。みんなが「空気」に流されたためにおこったんだ。それぞれが「考えること」をしないで。
とのある種物議を醸すかもしれないような発言をしていたりと、偶然なのかもしれませんが、現実にマッチするような内容になっています。
いきなりセカンドシーズンみても判らないと思うので、ファーストシーズンから是非観てみることをおすすめします。
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/GC_insight/
いかがでしたでしょうか。
どの作品についても、大人が鑑賞して十分に考えさせられる要素があると思います。
是非チェックしてみることをおすすめします。